「メディアの法則」でこんなことを書いた。
メディアは信じるものではなく比較するためにある。良書だけ読めばよい大人になるわけではないように、良質といわれるメディアでも比較するものがなければどこが良いのかわからない。さまざまなジャンルのメディアに触れてこそ判断ができるのである。
「あるある」騒動を見ていると、「あるある」教の信者が、番組の言うとおりに商品を買ったのに、それが効かなかったという、あたかもいんちき詐欺にでも会ったかのようにさえ見える。10年も番組が続いたのだから、少しはおかしいと思っただろうし、そんな噂も流れていたに違いない。それでも、高視聴率だったのは、信者がそのミスを見たくなかったからだ。
人間の脳は、見たくないものは見えないし、聞きたくないものは聞かなくてすむようになっている。興味のあるほうに目や耳が動くように脳ができているのである。したがって、ホームレスがそこにいても、記憶に残らないし、酔っ払いが叫んでいても、耳をふさいでしまう。これをバイアス(偏見・歪み・先入観)という。人間はそれぞれの趣味趣向によってバイアスが違う。
さて、テレビが報道しているものが正しいと思うのもバイアスである。一方メディアにもバイアスがあるという。池田信夫氏のブログでこんなコメントがあった。
メディア・バイアス (池田信夫) どうも私の話を「甘い」という人が多いので、逆に品質の基準を思い切り(NHK以上に)上げてみましょう。そうすると、たとえば「飲酒運転が増えている」「いじめ自殺が増えている」という報道は事実ではなく、ほとんど捏造に近い。ではなぜそういうバイアスのかかった報道が横行するかというと、そういうことにしたほうがおもしろいからです。
テレビがそれを取り上げるのは、事実であるかどうかでなくて「おもしろい」からだという。
テレビは(報道も含めて)本質的には娯楽であり、そこに出す情報を選ぶ基準は、おもしろいかどうかだ。(池田信夫氏のブログ)
これはねつ造の心理?退屈が怖いでも触れたことがある。
さて、先日「世界一受けたい授業(日本テレビ)」でアル・ゴア元副大統領が登場した。ここで「地球温暖化!地球に住めるのはあと10年!?」というタイトルで地球温暖化の危機について授業をした。
おそらく彼の関係する「不都合な真実」という映画のプロモーション活動なのだろう。池田氏は「アル・ゴアにとって不都合な真実」という反論を寄せている。さらに2月2日の「地球温暖化のメディアデバイス」でも日本のメディアがいかにバイアスにかかっているかを論じている。
つまり、「世界一受けたい授業」で地球温暖化を取り上げた理由は、決して視聴者に地球温暖化の警鐘を鳴らそうと思って取り上げたわけではない。ただ、番組として面白いから取り上げたのだ。もちろん、そこから何を学ぼうと視聴者の勝手だが。
さて、「地球温暖化論」の反論として池田氏のブログに取り上げられた本がある。そのマイケル・クライトンの「恐怖の存在」(早川書房)によると、エコロジーブームを使って環境テロリズムを行う集団が実在する。そして、メディアは彼らにとって大衆を操作するための重要な武器になる。
僕自身の感想としては、危機感をあおらなければ進まない人間たちには「地球温暖化」は立派な動機となるし、これがなかったら人間はどうしようもなくなるという不安があるのだが、それもメディアによるバイアスなのだろうか。
メディアは信じるものではなく、おもしろがるものである。メディアはそれ以上のものではない。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
mugendai on 2007/02/04
メディアに対して発信する政府の方がより深い問題と思います。
統計発表など、世論誘導の道具のような場合があります。
それをそのまま報道するメディアも、まったく困ったものですが。
最近報道された中では、給食費の未納が増えたというのは、平成17年より以前は何の調査されておらず、何のデータもなく、未納があった学校だけに、ここ数年で増えたと「思うかどうか」聞いただけという、統計以前のお粗末なものです。
それをマスメディアがそのまま取り上げ、親のモラル低下として個人ブログでも嘆く人が多いというような構図です。
政府の「イメージ戦略」、そしてそれを倍増させるマスメディアに乗らない冷静さと、防衛する知識が個人に必要ではないかと思います。
いしだ on 2007/02/04
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いしださん、コメントありがとうございます。
メディアの役割として、本来、ジャーナリズムとエンターテインメントの分野があると思います。ジャーナリズムの基本は、調査して報道するということが基本です。ところが、その調査力がどんどん落ちている。新聞にしても週刊誌にしても、見出しだけは騒々しくて中身が空っぽというケースが多い。また、テレビにしてもそうです。すべてが娯楽に引っ張られていく。昔のお笑いはちゃんと、社会風刺や政治風刺という分野があった。今は、爪や牙をなくし、自壊作用さえ起こしている。当然、そこに政治介入のすきを見せているのです。しかし、自分の局さえしどろもどろなのに政治家を批判する力を失っているように思えます。