僕たちは、親や教師、友達よりも長時間、テレビとともに育った。テレビに裏切られる人もいるが、テレビに出ることを夢見る人もいる。テレビに出る人には一つの特徴がある。それをちょっとまとめてみたい。
テレビを中心に生きていくと、人間が非常にテレビと同じようになっていく。今、問題になっているADHD(注意欠陥多動障害)の特徴によく似ていることに気がつくだろうか。(「テレビ化する社会」)
@注意力が著しく欠乏している。
勉強や仕事など、細かい注意を払うことができず、誤りを起こすことが多い。遊びにおいても注意を持続することが困難。話しかけられても聞いていないことが多い。よく物をなくす。やるべきことを直ぐに忘れてしまう。
A非常に落ち着きがない。
手や足をよく動かして、ソワソワしたりモジモジしたりすることが多い。じっと座っていることが苦手。過剰に話すことが多い。
B 衝動的である。
質問が終わっていないのに答えてしまうことが多い。順番を待つことが苦手。他人の会話や遊びに直ぐ首を突っ込んでしまう。(カウンセラーが書いたエッセイ集「心の金曜日」)
もちろん、テレビと一緒に成長したから、こんな子供が生まれるといっているのではない。この重要な三点が不思議なことにテレビ番組の特徴と共通していることだ。
そこで「テレビ化社会の症状」として次の三点を挙げた。
@スピード病
ものごとを持続的に考えようとしなくなる。これは致命的だ。何度か登場したハルバースタム氏も「テレビには記憶がない。過去に興味はない。過去は消し去るのみ」と言い切る。なにもテレビのみが元凶ではないが、世の中あげて「忘れたがり」「その場限り」「こらえ性なし」になっている
A目立ちたがり病
いわゆる全員総評論家現象と言われるものですね。みんなが平気でテレビに出たがるし、テレビに出ている人たちを自分の分身のように見ている」
「そうそう、テレビ局は、制作者の意図を汲んで一応その線に添って話してくれる人だと安心なので、ご用聞き的存在の万能評論家が政治・経済・文化・風俗…なんであれの番組を引き受ける。私たちも、そんな人は専門知識を有しているはずはない、ほどほどの突っ込みでも仕方がないとわきまえてテレビを見ている。そしてそれがテレビだとなる。ときたま「そうでない人」が現れる、すると、私たちは「これはテレビではない」とチャンネルを回してしまう。ますますテレビ的なものが固まるわけだBオール甘口病
甘口病は、わかりやすさですね」
「それも、「すぐにわかったつもりになるほどのわかりやすさ」だ。テレビではこのわかりやすさが二重になっている。番組を作るほうは、これでもかこれでもかと口当たりのいい糖衣でくるむ。視聴者のほうもちょっとでも抵抗を感じたらポイ捨てしてしまう悪いくせがついている。というのも“ちょっと待っていまのところがわからない”なんていうのはテレビのルールにはないことを、送り手、受け手ともに承知している。(佐藤二雄「テレビとのつきあい方」岩波ジュニア新書)
テレビに出てくる人間についていくつか書いたことがある。
普通の一般大衆は、騒がれるとパニックになり不安になる。何をしていいかわからなくなるからである。しかし、逆に騒がれなくなると不安になる人たちもいる。
今、メディアを騒がす人たちを見ていると共通点がある。かつての栄光を背負っているために、それにすがろうとして自分のプライベートをメディアにさらけ出してまで露出をする人たちである。彼らは、テレビに出ていないと忘れられてしまうかのように不安になる。
Aさびしき人々。
1)自分のこと、自分の関心のあることばかり話したがる。逆に、自分の事が話題になるのを極力避けようとする。
2)大げさな表現や大きなことを口にしたがる。ありふれたことではなく、普通の人が言いそうにないことを、さらっと言ったりする。意表をつくような、周囲があっというようなことをすることがある。どこか現実離れをした話をしたがる。(岡田尊司著「誇大自己症候群」ちくま新書) (以下略)
B便利屋の人々。
最後に(佐藤卓己著「メディア社会――現代を読み解く視点」岩波新書)からこんな言葉を紹介しよう。(「亀田はなぜ叩かれたか」)
マス・メディアが特定の意見を優勢と報じると、それと異なる意見を持つ人々の沈黙を生み出し、その沈黙がメディアの報じた判断の正当性を裏付ける。そのため、社会的孤立を恐れる人々は勝ち馬を追うようにマス・メディアの報じる優勢な見解に飛びついていく。こうして特定の意見が螺旋状に自己増殖してゆき、最初の意見分布とは異なる圧倒的な多数派世論が作られていくことになる。(佐藤卓己著「メディア社会――現代を読み解く視点」岩波新書)
この言葉は「沈黙の螺旋」として有名である。
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