あらかじめ、告白しておくが、このタイトルは、「ネットがテレビを飲み込む日」のパクリである。
よくネットとテレビが戦っているといわれるが、「ネットと放送の新時代」でパートナーとしてYouTubeにアメリカのテレビ局が並んだのを見たとき、テレビはネットと共存していく方向に向かっていくのだと思った。そこで、ネットでテレビが放送するためのハードルを考えていこうと思う。
@テレビメーカーが考えるテレビの形
テレビ局にとっては、ゲームやDVD、インターネットのブラウザなど、自分たちの番組以外の映像がテレビに映されるのは、自分たちの収入源であるスポンサーの広告料を減らす原因となり、あまりいい気持ちではない。
一方、テレビメーカーとしては、かつてテレビとは耐久消費財であり、そんなに簡単に買い換えるものではなかった。今回のBSデジタルや地上デジタル化は新しいテレビを売り出す大きなチャンスとなる。ある程度、薄型テレビが普及しつつある現在、次の新機能としてインターネットが映る機能をつけることになった。それが、「acTVila(アクトビラ)」というポータルサイトと「DLNA」(Digital Living Network Alliance) という家庭内のネットワーク接続システムであった。
「5年後のテレビ」で「DLNA」(Digital Living Network Alliance)が、今着々と進んでいると紹介したが、それについてはCNET Japanの「インターネットテレビの普及へ、通信家電企業がコンソーシアムを結成」にも書かれている。
さらに2007年2月から始まったという「アクトビラ」(TVPS、テレビポータル「アクトビラ」を07年2月に開始)それに対してはジャーナリストの森祐治氏の「新テレビポータル「アクトビラ」で消費者を満足させられるのか」で批判されている。
アクトビラという、日本固有のブロードバンド環境へプラグイン可能なテレビとそのサービスは、ケータイで生じている「ガラパゴス症候群(外部と隔絶された土地で固有の種が固有の進化を遂げている状態。しかし、外部からの種の侵入によって、絶滅的な状態に陥る可能性が高いこと)」に陥る―しかもケータイでは一度は生じたパラダイス状態を経ることなく―可能性が高い。
この「ガラパゴス症候群」については、「日本流が通用しない原因は『パラダイス鎖国』」と同じ共通点が伺える。
しかし、これらの「DLNA」にしても「アクトビラ」にしても当然ながら、対応機器がなければそのサービスが受けられないのだ。言い換えれば、ハイビジョン対応で儲かった電機メーカーが、次の新商品の付加価値としてこれらの機能を歌うことは見え見えなのである。
Aテレビ局がネットを使うメリット
次に問題になるのは、それほどテレビ局がインターネットに食指をそそらせていない点だ。地上デジタル化で各局は大きな予算を取られている。しかし、デジタル化で映像がきれいになるのはよいのだが、その分、手を抜けず金がかかる。番組の内容は、「あるある」問題のように、根本的にテレビ局の構造から改革しなければならない。
毎日新聞3月24日にこんなコメントが載っていた。
「われわれは科学番組を作っているのではない。報道でもないんです。われわれは情報バラエティー番組を作っているんです」
このコメントを見ると、「情報バラエティー番組」とは科学でも報道でもない、まったく新しい概念の番組ということになる。しかし、少なくとも「情報」という名を載せる時点で視聴者はその『情報』が正しいと信じて見ているのである。この情報の名をはずすか、「この番組はフィクションであり、実在の人物・団体とはまったく関係がありません」とたびたびアナウンサーが叫ぶべきである。つまり、構造とともに意識から変えていかなければならない。
テレビ局がインターネットに向かうとすれば、スポンサー企業が、ネットのほうが効率がいいとテレビ局を見限ったときである。そうなると、テレビ局として力を入れざるを得ない。
B著作権の問題
著作隣接権という言葉をご存知だろうか。
著作隣接権とは何か
著作権法によって、著作物を公衆に伝達するために重要な役割を果 たしている実演家、レコード製作者、 放送事業者および有線放送事業者 を保護する制度。
実演家は自然人、レコード制作者や放送事業者は事業体。
著作権し著作隣接権はそれぞれ独立した権利。
「隣接権という言葉は権利にある種の階級制を持たせたり、ある分野が他の分野に従属することを表す言葉であってはならない」 (クロード・マズイエ=法学博士)。
これは表題の元になった「ネットがテレビを飲み込む日」から引用すると、
放送事業者は、コンテンツの制作と流通がドメインであるため、自ら制作した番組の著作者となるほか、番組を放送しただけでも「著作隣接権」が付与される。
放送事業者の著作隣接権として定められているのは、@複製、A再放送(この用語は一般の語感とは違い、著作権法上は「いったんある放送局で放送した番組を、他の放送局を放送すること」を言う)と有線放送、B送信可能化(放送番組をネット上で利用可能にすること)、Cテレビジョン放送の伝達(大型スクリーンに映し出すなど)についての許諾権である。
しかし同時に、D放送のための一時的固定と、E商業用レコードは許諾を受けずに利用して後刻2次使用料を払えばよい、といった規定があるため、放送の素材として著作物を利用することが容易となっている。
テレビ番組には、放送局や脚本家のほかに、出演する俳優、使用する音楽のレコード会社や歌手といった、数多くの権利者が関係している。
そこで著作権上の「放送」であれば、前述のとおり商用レコードについては事前の許諾なく使用して、事後に使用料を払えばよい。
また、事前許諾を要する場合も、JASRAC(日本音楽著作権協会)をはじめ各種の権利団体と包括契約を結んでいるので、個別の処理は不要である。(CHAPTER03著作権は通信と放送の融合を阻害する悪役なのか/林紘一郎著)
放送と通信の差は何か。同書はこんなわけ方をしている。
公衆送信――
自動公衆送信<インタラクティブ送信>インターネットのホームページなどを用いて、「公衆からの求めに応じ自動的に行う」送信。ただし、下記のものを除く。
放送(同時送信)テレビ放送やラジオ放送など、「公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信」
有線放送(同時送信)CATV放送や優先音楽放送など、「公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信」
つまり、テレビ局には許されていた著作隣接権が、インターネットにはなく、同じ放送コンテンツを流す場合には、改めて個別に許諾を取らなければならないのだ。
しかし、このことはテレビ局がインターネットを通して放送コンテンツを流す場合も同様である。インターネットで流せる放送コンテンツがあまり魅力的でないのもそのことが自分たちの足を縛っている。
Cテレビ局はテレビという「パラダイス鎖国」から抜け出せるか
テレビ局の持つ半世紀以上の豊富なコンテンツは、世界に通用するコンテンツの宝庫になりうるはずだ。しかし、現在のテレビ局の制作力では、宝の持ち腐れとなってしまう。そして、海外との熾烈なコンテンツの競争に勝ち抜くことは不可能である。テレビ局がテレビ電波を占有することで、莫大な広告料を得る時代は間もなく終わるだろう。視聴率至上主義からコンテンツ中心に移行するには、著作権の問題などの法律の整備と、今ひとたびのテレビ草創期の情熱を取り戻さなければ、日本のテレビの終末は意外に近いに違いない。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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