これは、SCEの社長退任を発表した久夛良木氏が今週発売の週刊東洋経済5/19号「僕がやめる本当の理由を語ろう」の中の言葉である。
今、僕は世の中がリスクをとらない風潮に向かっていることをすごく心配している。産業界に共通してリスクをとらずに、確実に利益をとりにいく風潮があるよね。例えば、かつてのソニーは、失敗を恐れずにどんどん挑戦した。大きな失敗もいろいろとしたけど、いろんな挑戦の中からキラッと光るものが生まれた。挑戦をやめたら、進化は止まるし、未来はつくれない。僕のSCEでの人生は、未来への挑戦の歴史だと思う。リスクを背負って、果敢に挑戦してきたつもり、SCEを離れた後も、そういう僕の生きかたは変わらない。
(中略)昔のソニーには社内に猛獣がたくさんいてね、だから活気があって、面白かったんだろうなあ。お世話になった先輩たちがよく言うんだよね、昔のソニーには猛獣がたくさんいたし、猛獣使いもたくさんいたと。猛獣の僕がこんなこと言うのも変なんだけど。
思い出すのは、前に書いた「久夛良木氏がSCEの社長退任でPS3はどうなる? 」の中の言葉である。
物を作ることは、結局人を見極めることである。なぜなら、ものづくりとは集団作業であるからだ。自分のことにしか関心のない人間には物を作れない。その人の能力を見極め、その人をどのように配置すれば、ものづくりができるかという設計図を描けてこそ、ものづくりに成功するのである。ソニーには、才能のある人間はたくさんいたはずだ。だが、その人間がどんな能力を持ち、どこに配置できるかを見極めた人間はどこにもいなかった。
今回はそこで引用したPC Watch連載の「本田雅一の週刊モバイル通信」の中からこの「猛獣使い発言」と呼応した箇所を抜き出してみよう。
ソニーという会社は、全体のバジェットの中で、比較的自由に技術開発や製品企画/開発を泳がせ、自由な発想の“欲しい”と思わせる製品が生まれて来やすい環境を作るのが上手な会社だった。その背景として、自由に社内で競わせながらも、将来を期待できる技術や商品アイディアと、期待できないものを的確に判断し不要な枝は剪定してしまう、技術を評価する目が経営の中にあった。
しかし、ある時期から“剪定”を上手に行なって枝振りを整える人材がいなくなったように思う。経営の効率化を進める中で、以前よりも遊べない会社になったということもあるだろうが、ソニーが不調に陥る最大の原因は有望な技術と無謀な技術の判断を見誤ったためだ。
「猛獣使い」と「庭の剪定」、無駄な部分を刈り取り、伸びて欲しい能力を伸ばす。ソニーが社員募集をしたときのキャッチフレーズ「出る杭を求む」は、昔話なのだろうか。
日刊ゲンダイ久多良木SCE会長の「ケンカ人生」さらばソニーの中から、久夛良木氏の言葉を抜き出してみる。
「暴れん坊です」
「ソニーを辞めてもゲームをやります」
「(ソニーに)何か能力が足りないということだろう」
「ソニーの社長にはなりたいと思わないし、いやですね。自分のつくった会社ではないですから」
久夛良木氏はソニーの社員というよりも、ソニーといつも戦っているといったほうが正しい。自分の夢に挑戦するために、SCEを離れるという。週刊東洋経済にもその夢のことが書かれていたが、久夛良木氏の話はどうしても具体的に想像することがむずかしいので、ここでは引用しない。とりあえず久夛良木氏、PS4で復活かなどで想像力をたくましくして次のサプライズを待っていればよい。ともかく、こうしてソニーから最後の猛獣が離れていったわけである。
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